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古書には三つの価格がある

古書には三つの価格があります。第一にお客様からの買い値、第二に古書市場での相場、第三にお客様への売り値です。なりわい古物商はほかの商売とは違い、まだ商品ではないものを仕入れて、商品にして販売する生業です。すでに述べたように、蔵書家の本棚に並んでいるとき、本はただの「本」です。そして、古本屋が買い取り価格を付けて、はじめて「古本」になります。古本屋に並んでいる「古本」がお客様のものになったとき、「古本」はまた、ただの「本」に戻ります。商品ではないものを商品にする古物商はたんなる流通業ではなく、生産的な機能ももっているのです。そのため、そこにさまざまなコストも計上されます。はじめからパッケージされ、伝票を付けて送られてくるほかの商品の仕入れとは、その点が大きく異なっています。

○原価率と古書相場

流通業の原価率、つまり売り上げに対する仕入れの割合はどれくらいでしょうか。原価は卸売り業者に支払った価格だけではなく、運送やその他、仕入れにかかる費用全体を含んでいます。多くの流通業では、30%から60%ぐらいが原価です。これは上場企業が発表する決算書をみれば明らかです。古書店での原価率はどのくらいになっているでしょうか。同業者の話から総合的に判断すると、10%から40%程度とかなり幅があります。ここで注意したいのは、古書には三つの価格があることです。このうち市場での取り引き相場はお客様からの買い値と売り場での売り値の中間にあると考えられます。したがって、おもに市場で仕入れて販売している古書店と、おもに一般客から買い取りしている古書店とでは、原価率がかなり違ってくるのです。また、お客様から仕入れて、市場に出すのがおもな仕事という古書店もあります。お客様に売るのが一年二年という単位なのにくらべて、市場に出すほうは、はるかに早く売ることができます。その代わりリスクも大きくて、出してみなければいくらになるかわかりません。最低これ以下では売らないという止め値は付けられますが、自分で売り値を決められるわけではないからです。では市場に出品した場合、どのくらいの利ざやが稼げるのでしょうか。出品したものをお客様からいくらで買い取ったかは、古書店にとって秘中の秘です。売買が成立している以上、落札価格が買った金額を超えていることはまちがいないのですが、それをいくらで仕入れたのかを明かす人はいません。私の見立てでは、予想落札額の半分以上で買う人はいないのではないかと思います。というのも、市場の値段はそのときによって倍ぐらいの聞きがあるからです。一万円になりそうだと予想したら五千円ぐらいで仕入れ、それが実際の市場では七千五百円から一万五千円ぐらいになるのが、常識的なラインではないでしょうか。

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